タイトル
“Effect of a Medical Subsidy on Health Service Utilization Among Schoolchildren: A Community-Based Natural Experiment in Japan”
Health Policy 123.4 (2019): 353-359.
原文はこちら
論文を一言でまとめると
日本の同一都道府県内で導入された、学童(6-11歳)に対する医療費に対する
医療費補助政策(外来・入院の医療費は、一定額まで自己負担がありそれ以上は無料となり、薬剤費が完全無料となる政策)を導入した前後を比べると、
上記の医療費補助政策の導入により、
外来や入院の医療費は増加しなかったが、処方薬の医療費は増加しており、
医療費は完全に無料にするよりも一定額までの自己負担を持たせる政策の方が、医療費の増大には繋がらずに医療費を補助できる可能性が示唆された。
Methods
[期間]
2012年4月〜2017年1月までの、ある県における21の自治体のデータから、
2013年4月の時点で小学1年生〜6年生のデータを抽出した。
[場所]
西日本のある1県
[比較対象]
「医療費は1日最大800円かつ1ヶ月で最大1600円まで自費で、それ以上は無料となる政策」と「薬剤費の完全無料の政策」という医療費の補助政策を導入した、前と後の比較
[Outcome]
①外来の医療費/month
②入院の医療費/month
③処方薬の医療費/month
[Estimation]
差分の差分分析(difference-in-defference)を用いて、政策の導入前後を比較する
結果まとめ
・研究期間内に、8,581名の学童が対象となり、男女差はなく、既往がある児は20%程度であった。46ヶ月追跡し、観察された394,726人年のうち研究対象となったのは104,930人年であった。
・医療費補助政策の導入により、外来の医療費は55.4%、入院の医療費は98.5%、処方薬の医療費は100%が補助された。
・上記の医療費補助の政策を導入すると、医療費が外来・入院における医療費は変わらなかったが、処方にかかる医療費は116% (95% CI 103-131%)と増加した。また、既往のない児では処方にかかる医療費に有意差を認めなかったが、特に既往のない児に限ってみると、処方にかかる医療費は121% (95% CI 105-141%)と有意に増加していた。
・医療費補助の政策の導入は、外来サービスの頻度や数に影響はなかったものの、1回の外来における医療費は全体で93%(95% CI 87-99%)減少を認め、既往のある児でも82%(95% CI 71-95%)と減少を認めていた。
・医療費補助の政策の導入は、入院や入院の日数に影響を与えなかった。
・医療費補助の政策の導入は、処方する確率を全体で107%(95% CI 103-112%)増加させ、既往のない児では109%(95% CI 103-114%)増加させた。また、ジェネリック医薬品の割合が全体で95%(95% CI 91-100%)に低下し、既往のない児で94%(95% CI 90-99%)に低下を認めた。
[Limitation]
・日本のある1つの県で行われた研究で、一般化しきれないこと
・小学生未満を対象としていないため、小児全体に一般化できないこと
次郎作の感想
やっぱりいつも読んでる臨床の論文と分野が違うと読むのかなり疲れますね。あまりMethodsの数式やその妥当性も分からず、ちゃんと勉強したいなと感じました。